重たく厚くなるエアコンと、そうしたいメーカーと、耐えられない壁のジレンマ(後編)

前編を書いてから約一週間が経ちました。一週間たって後編です。なんだかアニメみたい・・・

前回の内容が、最近のエアコンが省エネやパワー、高機能の為にどんどん大型化&激太りしており、壁が耐えきれなくなって、家のエアコンが傾いているのですが、なぜか厚みだけが増して横幅と高さは増していないのです。この理由を書くところで前回は終わっていました。詳しく見たい人は前回の記事をどうぞ。


家のリビングのエアコンと最新機種を比較すると、本体の高さと横幅は全く変わっていないにもかかわらず、厚みだけ10センチ以上も大きくなっている。性能を上げたり高機能にする為なら厚みだけ増やしたりせず、横幅も高さも大きくすればいいと思うがなぜ横幅や高さを大きくしていないのか。その理由を調べると、省エネ規制がエアコンの大型化を阻んでいる事が分かったのだ。

 エアコンは、本体のサイズによって「寸法規定」と「寸法フリー」に区分けされている。寸法規定と寸法フリーがどう違うのかを書くと、

寸法規定:横幅0.8m以下&高さ0.295m以下のエアコン

寸法フリー:それ以外のエアコン(大体は横幅が0.9mに伸びたもの)

と言う風になっている。エアコンは本体サイズがコンパクトなほど省エネ性能を上げるのが難しい為、寸法フリーのエアコンは寸法規定のエアコンよりも高い省エネ規制が課せられていることが分かった。この規制の狙いはエアコンを省エネ化する為にどんどん本体が大きくなることを見越して、エアコンが規定サイズに収まらないなら省エネ規制値を上げる事により、省エネの為に大型のエアコンを作るよりも省エネ技術を開発するメーカーが有利になるようにした。

エアコンに課されている省エネ規制は、「通年エネルギー消費効率(APF)」で、一年間に発揮する空調パワーを消費電力で割った数値だ。下のグラフがエアコンの能力&大きさ別に性能を表記したもの。APF値が高ければ高いほど省エネ性能が高く、同じ温度なら電気代が安くなると言うものだ。

ここで見てほしいのが~3.2kWと~4.0kWの値だ。

~3.2kWの寸法規定と寸法フリーの規制値の差は、5.8と6.6で、0.8ある。

~4.0kWの寸法規定と寸法フリーの規制値の差は、4.9と6.0で、1.1もある。

広い部屋を冷やす大容量の機種になればなるほどサイズがコンパクトだと省エネ性能を上げるのが難しい事が規制値からも分かるが、寸法フリーのエアコンには、サイズの大型化分以上の厳しい規制値が課せられていると個人的には感じる。APFの5.8と6.6は、サイズが寸法規定から寸法フリーになったくらいでは簡単に埋まらない。

 例えば、14畳を冷やす能力がある4.0kWのエアコンが、寸法規定でAPF4.9を達成した時の基準達成率を100%とすると、同じサイズでAPF6.0を達成した時、基準達成率は122%となり、電気代は6000円も安くなる。

 寸法規定の基準達成率122%が寸法フリーの100%と同じと考えると、寸法フリータイプは寸法規定の物より22%分省エネ性能を高めないといけないのだ。


ここからは結構現実的な問題だが、店に4.0kWでAPF6.0の寸法規制のエアコンと寸法フリーのエアコンが並んでいた時に、寸法規制のエアコンには「省エネ基準達成率122%」と書かれていて、寸法フリーのエアコンには「省エネ基準達成率100%」と書かれていたらどうだろうか。どちらも省エネ性能は同じなのに、パッと見で寸法規定のエアコンの方が省エネ性能が高く見えないだろうか。同じ省エネ性能でも寸法規定の方が省エネに見えれば、当然そっちの方が売りやすい。仮に寸法規定のAPFが6.0で寸法フリーのAPFが6.5と、寸法フリーのエアコンの方が実際には省エネ性能が大幅に高かったとしても、省エネ基準達成率で見れば、寸法規定は122%なのに対し、寸法フリーは108%。

   そしたら「ハー?寸法フリー作り難いじゃん」てなる訳

 省エネ規制値で優遇され、基準達成率を高めやすい寸法規定の範囲内で省エネ性能を手っ取り早く高くするには、寸法規定に定められていない「厚み」を大きくするしかない。もちろん、メーカーは熱源機(室外機)を大きくしたり、圧縮機を高効率にしたりと色々工夫してはいるが、エアコン売り場は省エネ戦争の激戦区であり、1%でも省エネ性能が高い方が販売しやすい。

 もしエアコンが寸法フリーなら、本体が重たくなっても支える面積が大きくなって壁も耐えやすくなるとは思うが、簡単に寸法フリーには出来ない現実がある。寸法規定サイズのまま中の熱交換器搭載量を増やして性能を高めるには厚みを大きくするしかない。今の省エネ規制は約10年前に作られた物だが、当時、2015年現在のエアコンの厚みがここまで大きくなって、本体が重たくなって、壁が耐えきれない事を誰が想像しただろうか。メーカーは今後も省エネ戦争を繰り広げると思うが、壁の耐荷重があるが故に、本体の厚みや重量を大きくする事による省エネ性能の向上は近いうちに限界を迎えると思われる。


フツーの高校生のキャッホーな毎日

のんびりと過ごす事が好きな高校生です。 日々、きつくない程度にこなしています。 好きな事を好きなだけやっています。

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